令和2年10月19日作成

麦類

(担当)JA全農さいたま 営農支援課

 

さわやかな秋風が刈田のひこばえをなびかせ、今年も間もなく麦播きシーズンの到来です。この2年ほどは木枯らし1号も吹かず、ぐずついた天気が続き種まきが遅れました。また、近年は暖冬で作柄も不安定になっています。今日、麦の生産を阻害する要因は、[1]播種期の湿害、[2]暖冬による生育凋落、[3]春先の高温乾燥による枯れ熟れ、[4]難防除雑草の多発生があげられますが、これらへの対策の多くは播種までの作業の出来具合がポイントになります。今年はしっかり準備と対策を実行して、高品質麦の多収取りを実現しましょう。

1. 播種期と冬の天気予報

9月25日発表の3か月予報と寒候期予報(12月~2月)によれば11月は晴れの日が多く気温は平年並みで、12月以降もほぼ平年並みのようです。ラニーニャ現象が続けば東日本に寒気が入りやすく寒くなることも考えられ、昨年のような暖冬にはならないことが予想されます。

2. 種まきは11月下旬

近年、11月中旬頃まで降雨が多く、また暖冬傾向でもあるため、これまで播種適期とした11月中旬では湿害発生の危険度が高まるとともに、冬期の生育過剰から肥料切れや生育の凋落から、収量や品質の低下が起こりやすくなっています。

今冬は平年並みの天候との予報がありますが、より天候の安定してくる11月下旬を播種適期に置き、12月上旬までの3週間で播種作業を完了する計画を立てましょう。

3. 荒起こしと土壌改良

(1)耕耘

水稲後の耕耘は、できるだけ粗く深く起こします。最初から細かくすると降雨後に乾きが遅く、作業が遅れる原因になります。また、土壌が硬く締まったほ場ではプラウやハローで圧密をなくし根張りをよくすることが枯れ熟れの軽減に有効です。

(2)土壌改良(有機物施用)

堆肥等の有機物を播種の1か月前に散布しておきます。家畜糞堆肥を使う場合、特に牛糞はネズミムギ(イタリアンライグラス)等の雑草種子が混入している場合があるので、完熟したものを使用します。有機物が手に入らない場合は、腐植酸等を含み土壌改良効果に優れるレオグリーン特号を10a当たり100kg施用しましょう。

(3)酸度矯正(石灰質資材の投入)

麦は酸性に弱い作物です。最適な土壌の酸度(pH(H2O))は6.0~6.5の範囲です。

水田であっても麦にとってはやや酸性に傾いていることがあるので、苦土石灰等の石灰質肥料を播種の2週間前に散布しておきましょう。なお、必要な散布量は土壌の種類と酸性度によって異なりますので、JAまたは県農林振興センターに相談して下さい。

(参考)pHを1上げるための石灰施用量の目安(kg/10a)

土壌の種類 炭カル 苦土石灰 消石灰
黒ボク土 300~400 280~380 240~320
沖積土 180~220 170~210 140~180
砂質土 100~150 90~140 80~120

4. 徹底した排水対策

適期に播くために、また湿害を回避するために水田作では明渠は必須です。播き遅れや播き直しをしないためにも必ず実施して下さい。

できるだけ播種前にほ場の額縁とほ場内10m間隔で施工しましょう。また播種作業等で埋まったときは再度掘り直してください。

5. 基肥と追肥

(1)基肥

次表のとおり、しっかりと入れましょう。早く撒き過ぎて雨で流亡させてしまわないよう、播種直前や施肥播種機の利用を進めましょう。

麦類 品種名 施肥量(N:P:K) 参考)化成肥料14-14-14の
10a当たり施用量
小麦 さとのそら 6:6:6 43kg
  あやひかり 8:8:8 57kg
六条大麦 さちかぜ 7:7:7 50kg
二条大麦 彩の星 7:7:7 50kg
はだか麦 イチバンボシ 7:7:7 50kg
(2)追肥

多収と高品質のために追肥は必要で、特に小麦と六条大麦では追肥は必須な作業です。枯れ熟れ防止のためにも必ず実施しましょう。なお、小麦さとのそらでは追肥を省略できる一発肥料「省力さとのそら」も有効です。この場合、施用量は10a当たり60kgとなります。

麦類 品種名 追肥量(N) 参考)硫安21の10a当たり施用量
小麦 さとのそら 4 20kg
  あやひかり 2 10kg
六条大麦 さちかぜ 2 10kg
二条大麦 彩の星 (2) (10kg)
はだか麦 イチバンボシ (2) (10kg)

注)二条大麦とはだか麦は生育が悪い時や肥切れが見られる場合に実施。

6. 雑草防除

(1)耕耘前の対策

昨年、雑草が多く発生したほ場では、[1]麦の播種を11月末まで遅らせ、[2]耕耘する前にラウンドアップマックスロード等の非選択性除草剤の処理を行いましょう。カラスムギやネズミムギ(イタリアンライグラス)、除草剤抵抗性スズメノテッポウなど難防除雑草の低減に有効です。

(2)除草剤の選択

麦の播種後処理除草剤は、麦播種後から麦の4葉期まで処理可能な多種の剤がありますが、雑草に対する効果は雑草発生前から発生始(イネ科雑草では1葉期)までです。雑草は天候や播種条件によっては麦の出芽前から発生しますので、除草剤は播種後できるだけ早く散布することが重要です。

また、近年除草剤に抵抗性を持ったスズメノテッポウや、種が大きく除草剤にもともと強いカラスノエンドウが多くなっています。これら雑草が多く見られたほ場では、下表を参考に有効な薬剤を選択し、播種後速やかに処理を行いましょう。

薬剤名 麦種類 使用時期
ガレース乳剤 小麦・大麦(秋播) 播種後出芽前(雑草発生前)
ガレースG(粒剤) 小麦(秋播)・大麦(秋播) 播種後出芽前(雑草発生前)
小麦、大麦の1~2葉期(雑草発生前~発生始期)
キックボクサー細粒剤F   a 小麦(秋播)・大麦(秋播) 播種後出芽前(雑草発生前)
クリアターン乳剤・細粒剤F b 小麦・大麦 播種直後(雑草発生前)
ゴーゴーサン乳剤      b 小麦 播種後((雑草発生前)~小麦2葉期(イネ科雑草1葉期まで)
麦類(小麦を除く) 播種後出芽前(雑草発生前)
ゴーゴサン細粒剤F     b 麦類 播種後出芽前(雑草発生前)
バンバン乳剤         a 小麦(秋播)・大麦(秋播) 播種後出芽前(雑草発生前)
小麦(秋播) 出芽直後~小麦2葉期(雑草発生始期まで)
ボクサー乳剤         a 小麦 秋播栽培の播種後~麦2葉期(雑草発生前~発生始期)
秋播栽培の麦2~4葉期(雑草発生前~発生始期)
麦類(大麦、小麦) 秋播栽培の播種後~麦2葉期(雑草発生前~発生始期)
ムギレンジャー乳剤     a 小麦・大麦 秋播栽培の播種後出芽前(雑草発生前)
リベレーターG(粒剤)   a,b 小麦(秋播)・大麦(秋播) 播種後~麦2葉期(雑草発生前~イネ科雑草1葉期まで)
リベレーターフロアブル  a,b 小麦・大麦(秋播) 播種後~麦3葉期(雑草発生前~イネ科雑草1葉期まで)

注)各薬剤名の後のaは除草剤抵抗性スズメノテッポウ、bはカラスノエンドウに効果的であることを示す